前編「【基礎編】Gitはなぜ必要?エンジニアの必須スキルを大解剖」では「Gitはなぜ必要なのか?」という根本的な部分を扱いました。
後編であるこの記事では、もう少し現場に近づき、“Gitを使ってチーム開発を進めるときに、どんなことを意識すれば信頼されるのか?” を中心に解説していきます。
とはいえ、難しい技術の話は一切しません。
チーム開発で評価されるのは、派手なコマンド操作ではなく、「安全に作業し、周りが困らないように気を配れるか」だからです。
あなたが明日からチームに参加しても安心できるよう、実務に直結するマナーや考え方を、できるだけ分かりやすくまとめました。
1. チーム開発では“正しさ”より“安全性”が重要になる理由
Gitは「ファイルの履歴を記録するツール」という説明を聞いたことがあると思います。しかし、チーム開発の現場で本当に求められているのは、
“安全に進めるための交通整理”
としてのGitです。
あなたが修正したコードは、誰かの作業中のコードと重なるかもしれません。
誰かの機能とあなたの機能が偶然同じところに触れてしまうかもしれません。
そのとき、Gitは「同じ場所を触っているよ」と教えてくれます。
つまりGitは、「競合を発見してくれるガード」と言えるわけです。
だからこそ、技術的な知識よりも
「全員が安心して作業できる流れを守る」
ことのほうが圧倒的に重要なのです。
この“流れを守る”という感覚が、最初の壁になる人が多いのですが、逆に言えば、ここを理解できるとチーム開発は一気に怖くなくなります。
2. Gitがうまい人=状況判断ができる人
Gitの操作は、コマンドを覚えれば誰でもできます。
しかし、「Gitを使える人」 と「Gitを使いこなせる人」には明確な差があります。
その差とは、
“状況に応じて、安全な手順を選べるか”
という一点。
たとえば、初心者がやりがちな以下のパターンを見てみましょう。
- main(またはmaster)に直接変更を入れてしまう
- 他人の作業中のファイルを知らないうちに書き換えてしまう
- 自分だけ最新状態になっておらず、あとで大量の衝突が発生する
これらは技術的なミスというより、
「チームの流れを把握していない」ことが原因 です。
チーム開発は、全員が同じプロジェクトを同時に触る世界です。
だからこそ、
- どのタイミングで作業を始めるべきか
- どのブランチで作業すべきか
- どのように変更をまとめて送るべきか
こうした“プロセスの選び方”が特に重要になります。
これができれば、「この人は安心して任せられる」と信頼されるようになります。
3. 今日からできる“信頼されるエンジニア”のマナー
ここでは、経験者が無意識にやっている「チームが助かる振る舞い」を紹介します。
どれも明日からできる簡単な習慣です。
マナー①:コミットは「未来の仲間へのメッセージ」
コミットメッセージは、チームの人があなたの変更を理解するための重要な情報源です。
難しいことは必要ありません。
- 何を変えたのか
- なぜ変えたのか
この2点がわかるだけで、レビューが驚くほどスムーズになります。
「修正しました」「update」などの一言コミットは、未来の自分ですら理解できなくなります。
マナー②:依頼するときは“相手の時間”を意識する
レビュー依頼は、「相手の仕事を止める行為」でもあります。
だからこそ、最低限、以下を添えておきましょう。
- 何を変更したか
- 目的は何か
- 特に見てほしい箇所
- どんな動作確認をしたか
丁寧なPR(プルリクエスト)は、それだけで「仕事の進め方が理解できている人」だと評価されます。
マナー③:作業前の“最新化”は絶対に忘れない
初心者のトラブルの8割は、
「古い状態のまま作業を続けてしまう」
ことから生まれます。
作業前に
- 今のプロジェクトの最新状態を取り込む
- その上で自分の作業を始める
これだけでコンフリクト(衝突)は大きく減ります。
マナー④:小さな変更をこまめに分ける
変更を細かく分割するメリットは絶大です。
- どこで何をしたか説明しやすい
- 問題が起きても原因を特定しやすい
- レビューする人が理解しやすい
「小さく積み上げる」はチーム開発の基本です。
マナー⑤:初心者がやりがちなNG行動は必ず避ける
- mainへ直接push
- 1コミットに大量の変更
- 1ブランチで複数の目的を混在させる
- よくわからずforce系の操作を行う
- 差分を確認せずにpush
これらは事故の原因になります。
避けるだけで、チーム運営は格段に安定します。
4. トラブルを未然に防ぐ「作業の進め方テンプレート」
Gitは、うまく使うほどミスが少なくなる仕組みです。
そのためのコツは、難しい技術ではなく “正しい順番で作業すること”。
ここでは、実際のチームでも使われているシンプルな作業型を紹介します。
目的ごとに作業ブランチを切ると、変更内容が混ざらず、チームから見ても分かりやすい状態になります。
「午前中の作業」「ボタン周りの作業」など、必ず段階で区切りながら進めます。
変更が細かければ細かいほど、あとで自分もチームも助かります。
PRを出す前に、
- 余計な変更が混ざっていないか
- 不要なログが残っていないか
- 無関係なファイルが変更されていないか
をチェックするだけで、品質は目に見えて向上します。
- スクショを貼る
- テスト結果を書く
- 注意点を伝える
この“ひと手間”だけで、チームからの信頼度は大きく変わります。
5. 初心者がつまずくポイントと対処法
最後に、特に不安を持つ人が多い部分を整理しておきます。
コンフリクトは恐れるものではない
コンフリクトは「誰かと同じところを変更したよ」というお知らせです。
落ち着いて内容を確認すれば、丁寧に解消できます。
差分が大きくなりすぎたら作業を分割する
作業を続けるほど、プロジェクトの状態は進んでいきます。
そこでポイントは、
“大きくなる前に自分の作業を区切る”
ことです。
変更が多すぎるときは、ブランチを分け直す
「今回はUI調整だけ」「今回はロジック部分だけ」
といった形で分割すると、レビューしやすく、トラブルも激減します。
“誰が何をしているの?”をなくすためのコツ
- ブランチ名を目的別にする
- PR説明を丁寧にする
- 作業履歴を残す
これだけで、チームの混乱は確実に減ります。
まとめ:Gitができる=チームを安心させられる人
この記事で伝えたかったことは、技術ではなく 姿勢 です。
Gitは、あなたの作業を正しく記録し、チーム全体の安全を守るためのツール。
だから、上達に必要なのは
- 最新状態を確認する慎重さ
- 小さく区切って進める丁寧さ
- 情報を共有する誠実さ
- 他人の時間を奪わない意識
といった “チームと向き合うスタンス” です。
この姿勢さえ身につけば、コマンドを完璧に暗記していなくても、
あなたはもう「Gitが使えるエンジニア」です。
明日の開発から、ぜひ今日学んだマナーと工夫を取り入れてみてください。
チーム開発は怖くありません。
むしろ、誰かと作るからこそ、技術は何倍も楽しくなるのです。










「作業開始前に最新状態に整える」は、ほぼ絶対ルールと言っていいほど重要です。自分だけ古い状態で作業していると、後で大きなズレが生まれます。